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第88話 料理だけなら残せます

Author: 八月 猫
last update publish date: 2026-08-28 09:00:27

 夕食は一階の食事処だった。

 個室ではなく、半個室のように低い仕切りで区切られている。周囲の気配は感じるけれど、隣の会話までは聞こえにくい。

 席へ案内されると、窓の外には庭の灯りが見えた。

「いい雰囲気ですね」

「照明の使い方は悪くない」

「まずそこを見るんですね」

 帝人さんは何も答えず、座ったまま店内を見渡した。

 さっきまで手を握ったことで妙に静かになっていた人とは思えない。

 仕事へ戻るのが早い。

 やがて、年配の女性従業員が料理を運んできた。

「久世様、水城様。本日は地元のものを中心にご用意しております」

 私は一瞬だけ遅れてから、自分のことだと気づく。

 最初に並んだのは小さな前菜だった。

 山菜の白和え。

 川魚の甘露煮。

 薄く切られた根菜の酢漬け。

「こちらの山菜は、近くの農家さんから今朝届いたものです。毎年この時期になりますと、最初に採

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